才藝不孝2



11.携帯電話

 今回は少なからぬ携帯電話使用者へのへの憎まれ口です(^^ゞ。

 世は携帯電話市場が花盛りです。一年中どこへ行っても利用者を見かけます。街へ出て人混みに石を投げればかなりの高確率で携帯電話所有者に当たるでしょう(^^)。

 さてわたしはといえば、持っておりません。「必要がない」というのが直接且つ簡潔な理由ですが、傍目から見ていると携帯電話は便利さに劣らずその弊害が大きいのではないかと思わずにはいられません。

 携帯電話使用の心得(マナー)についてその乱れは少なからぬ人が感じているのではないかと思います。病院や飛行機内など命や安全に関わる場所ではさすがに使用の自粛が徹底しつつありますが、車内・劇場・学校等、多くの人が集まる場所での無遠慮な呼び出し音や会話には眉をひそめざるを得ません。仕事等で携帯電話を上手に活用している方も少なくないことは承知しつつ、携帯電話の問題について思うところを述べます。

 まず、これは基本的に相手に迷惑をかけることを前提にしたものだということです。もともと電話は相手の都合にかまわず一方的に連絡を入れて呼び出し音を鳴り散らすものですが、家庭用電話であれば受ける側は都合の悪いときには「出ない」という選択が可能です。また当然電話の使用に差し障りの無い場所に据え置かれていますから、よほど長電話でもしない限りは家族も文句は言わないでしょう。ところが携帯電話は用件先の個人が持っているのですから、掛ける側は相手が出ることを前提に掛けてきます。受ける側がいつ何をしていようとお構い無しです。対策としては留守番電話に切り替えるか電源を切っておけばよいですが、携帯電話の利点が減じるためどこであろうと呼び出し音が鳴れば所構わず会話を始める人を見受けます。

 次に、特に未成年が持つものではないと思います。先に述べたように相手の都合を考慮しませんから、些細な話題でも所構わず長時間話し続けられます。好奇心旺盛な未成年層の月額使用料が1万・2万あるいはそれ以上になることも聞きます。使用心得や経済観念の未成熟な者に安易に買い与えるには贅沢なものです。

 またその普及が急なため使用についての心得の社会的な醸成がひどく遅れていることは由々しきことです。その使用はあくまで私的行為であり、だからこそ使用すべき時と場所をわきまえること(わたしはタバコ並に自制すべきものだと考えます。)、守らないことは社会慣習として恥ずかしいことである意識を家庭や学校や職場や地域などで養い、老若男女問わず合意を形成してゆく必要を感じます。

 最後に携帯電話の便利さは「作られた」便利さではないかという疑問があります。確かに携帯電話は便利です。手元にあれば使いたくなる手軽さがあります。しかし漏れ聞く会話の内容はどう考えてもそこで交わされる必要がないと思えるものが少なくありません。「余計なお世話」という勿れ、その会話が周囲に与える迷惑が容認されるものではなく、使用者が会話に適切な場であるかどうかを判断して一時使用を控えればよいことです。自制や周囲への迷惑という点をないがしろにしてつい使ってしまう、そういう誘惑があると感じます。携帯電話から真に必要な連絡をする状況はかなり限定されてきますが、携帯電話を使っているつもりでも、実は携帯電話に使われている人がなんと多いことか。

 人は社会的な動物であるからこそ、他人と接する場面での作法や対処によってその家庭・地域・社会の文化的成熟度が見て取れると考えています。タバコの投げ捨てと並んで携帯電話の使用についても、その使用者の意識の向上を思わずにはいられません。

(2567.1.8)


12.こげぱん

 時間があると書店の店内を散策します。普段行かない専門書や児童書の棚もたまに訪れると何かしらの発見があり、今回は絵本の棚で見つけた本の話です。

 題名は『こげぱん』、第一集の副題は「パンにもいろいろあるらしい・・・。」です。主人公は焦げたあんパンの「こげぱん」。

 こげぱんは、本来は1日限定20個しか売られないおいしいあんパンで、開店と同時にすぐ売れてしまうというエリートパンになるはずでした。が、パンやさんがかまどにパンを並べたお盆を入れるときにパンが一つかまどの奥へ落ちるのに気が付かず、そして30分後、一個足らないのに気が付いたときはこげぱんが出来上がっていたということです。

 こげぱんは焦げたときの衝撃とパン(人)生は終わったという気持ちから、何事もなげやりです。無気力で無関心、落ち込みやすくすぐふて寝をする。八つ当たりややけを起こし、諦めが早い。でも、たまーに前向きになります。後輩に時々意地悪をしますが、本当はやさしく面倒見がよい。

 パンはきれいに焼けてお客に買われることに価値がありますが、こげぱんにはその望みが叶うことはありません。何とか買ってもらおうと色々と微笑ましい努力をするのですが、結局は売れない。こげぱんの中身には北海道十勝平野産の最高級アズキを使用した上等なあんこがはいっていますから、自尊心は強いのです。頭から立ち上る煙について、こげぱん自身は「香ばしい香り」と信じています。

 この焦げたパンの話にわたしは惹かれました。その素朴で飽きの来ない絵柄と穏やかな話の内容が良く合っていることもありますが、『こげぱん』は現実社会からちょっとはみ出た人たちの存在を投影した寓話だからではないかと考えています。

 モノには人が定めた価値の尺度があり、それを満たせないものは不良品や廃棄物として処理されます。先ほど触れたようにこげぱんもまた然り。普段生活しているそれぞれの範囲ではこうしたものはあまり目に入りませんし気にも留めませんが、ここに視点を当てたところが『こげぱん』の卓越した点です。

 いきなりですが、日本国憲法において誰もが自由権(国家権力による侵害・干渉を排除して個人の自由な生活領域を確保する権利)・生存権(立法・行政を通じて国民が国家に対して自己の生存または生活のために必要な諸条件の確保を要求する権利)・財産権などが保障されています。また人はそれぞれ己が持てる才能や努力によって自己を表現・主張しそれぞれの幸福を追求することを、他者のそれを不当に侵害しない範囲で為し得ます。しかし現実は理想通りにはなかなか行きません。まず出生時点において親や土地や風土や政府を選ぶことはできません。更に生い立ちの中で、様々な希望や可能性の大半を経済的理由や努力に見合う結果が得られないなど様々な理由で断念せざるを得ない。このような負の気持ちを抱えている人の姿をわたしは『こげぱん』に見るのです。

 例えば登校拒否の児童や生徒は十万人単位に上り、もはや特殊な事例ではなく社会一般の課題として取り組みが進められています。学校に行くということが社会制度・通念で当然とされる以上、登校拒否児童や生徒はものすごい葛藤をし、苦しんでいる。親も先生も悩み苦しんでいる。失業率は一向に改善されず、欧米並みに潜在的な失業者数を含めればそれは二桁になるのではないかという見方もあるようです。これら社会の一般的な枠組みや価値感から外れて悩んだり落ち込んだりしている人と「こげぱん」が重なってきます。こげぱんはそこまで深刻ではないにせよ、エリートパンになるはずが目的を見失って「やさぐれる(やさしく堕落・非行化する)」こげぱんに読者は親近感を寄せるのではないか。

 『こげぱん』は第3集まで出ていて、衛星放送でテレビアニメ番組が放送されているそうです。このこげぱん人気、上記の訳で単にキャラクターのかわいさにその原因が留まらないと見るのは深読みでしょうか?(^^;)なんにせよそこまで考えずとも大人も楽しめる絵本ですから、興味の湧いた方は店頭で一度ご覧になってみて下さい。

  ※『こげぱん』1〜3集  たかはし みき著  ソニー・マガジンズ発行  各1200円+税。 
(2567.9.25)


13.悪徳商法に注意!

 先日ある方(仮にA氏とします)宛てに、電話回線の未払い情報サービス料金を指定口座に支払うよう催促するハガキが届きました。しかしA氏が利用するサービスは違う会社であり、ハガキに書かれた会社を利用したことは無いといいます。相談を受けて調べたところ、請求書を不特定多数の人に送りつけ、業者とのトラブルを避けるために送金してしまう人を狙っている悪徳商法である疑いが強まりました。そこでA氏に「絶対に入金しないこと」と「消費生活センター及び警察に相談すること」を勧めたところ、後日A氏の話ではハガキの件やはり悪徳商法であり、ハガキを送ったと思われる関係者が逮捕されたそうです。

 個人情報の流出・売買が横行する昨今、このような悪徳商法は誰もが被害に遭う恐れがあります。今回は未然に防げましたが、他の方への警鐘としてここに悪徳商法の「譲渡債権の取り立てハガキ」の見本を固有名詞に関わる部分を除き紹介しておきます。

  ・参考
     国民生活センター
     群馬県消費生活センター情報
     群馬県警察ホームページ

譲渡債権の取り立てハガキ
(2568.6.9)


14.アテネ五輪男女マラソン代表選考

 わたしはマラソンが好きです。テレビ中継を見るのはもちろんですが、かつて一度地方大会にも参加したことがあります。その時は残念ながら「40km4時間」の関門を越えられず完走できませんでした。現在はご無沙汰していますがまたいつか再開し42.195kmを走り切ってみたいと思っています。

 さて3月15日の代表発表から1週間余り。当初の騒ぎは収まり、冷静にことの経緯を振り返る環境が戻りました。以下はわたしがマラソン代表発表前後に考え綴った文章に補足を加えたものです。一愛好者の一意見としてご笑覧下さい。

  *************************

  ※13日※

  【予想】国近・油谷・高岡

 予想の視点は「実績重視」です。
 国近は選考会候補者6名中最高タイムで優勝していることから優位でしょう。2番手以下が難しいのですが、国近を除く国内選考を走った4名と油谷のタイムはほぼ1分半以内に収まっていて、誰も飛び抜けた印象を与えません。そうなると過去の実績がものをいうことになり、全員優勝経験が乏しいため、エドモントン・パリ連続5位入賞の油谷及び中距離とマラソンの日本記録保持者高岡が消去法で選ばれる、というのがわたしの見方です。この予想は女子の日本記録保持者の処遇とも関わってくるのですが、それはまた女子の方で。

 [希望]国近・小島・大崎

 これは思い入れたっぷりの人選。瀬古監督の悲願を叶えた国近、福岡・びわ湖と走り結果を出した小島兄、一般ランナーにも希望を与えた勤労者ランナー大崎。みんな観ていてよかったです。

【男子代表選考資料】
大会名と順位
 選手名 
優勝者と記録
年齢
 記録 
自己最高
備考(実績)
パリ世界選手権5位
03.08.30
油谷繁
ガリブ(モロッコ)2:08:31
26
2:09:26
2:07:52
世界選手権
2大会連続5位入賞
福岡1位
03.12.07
国近友昭
同左
30
2:07:52
同左

福岡2位
諏訪利成
国近参照
27
2:07:55
同左

福岡3位
高岡寿成
国近参照
33
2:07:59
2:06:16
日本記録保持者
東京2位
04.02.08
大崎悟史
ジェンガ(ケニア)2:08:43
27
2:08:46
同左

びわ湖2位
04.03.07
小島忠幸
リオス(スペイン)2:07:42
27
2:08:18
同左
福岡にも出場(7位)



 男子に続き女子2人の予想をします(1名内定のため)。
 こちらは名古屋の結果が分からないのでもう先物買いのような推量にしかなりませんが、以下を挙げます。

 【予想】坂本・高橋

 坂本は内容・結果からして優位でしょう。
 三番手の高橋、この予想が実は男子と絡んできます。仮に今選考会の東京で高橋以外の選手が同様の結果を出し、誰かが名古屋で坂本を上回るタイムで優勝すれば、名古屋の選手がほぼ代表に選ばれるでしょう。名古屋で高いハードル設定をし、名古屋で22〜3分台の優勝者が出ても翌日高橋を「実績」加味で当選させるにあたっては、男子の高岡も優遇しないと説得力に欠ける。

 [希望]坂本・名古屋優勝者(好記録)

 多くの人からの期待と重圧をはね返しシドニーで優勝した高橋の実績と力はすばらしいものです。しかし東京のレースは他の有力ランナーが東京に出場しなかったこともあり日本人トップの2位でしたが記録は平凡なものでした。予選会で力を発揮できなかったが本番で実力通りの走りをしてくれる、そんな論法がまかり通るなら選考会予め決められた実績あるランナーを送り出す単なる儀式に堕してしまいます。男女各3人しか出られないからこそ、その3人を選ぶ選考会の重みは各ランナーにとって何よりも重く、男子の小島兄は本番への影響を差し置いても選考会を2度走ることで結果を示し、強烈にアテネへの想いを示しました。條件は厳しいですが、名古屋のランナーは好記録で優勝をつかみ陸連の思惑や周囲の雑音を封じてほしい。(もっとも、高橋との勝負を回避して他の選考会に臨み、選考の結果、順位やタイムは良くても実績で高橋に負けたということであれば、それはそれで始めから勝負はついていたわけです。)

 一部マスコミが伝えるような、名古屋を走るランナーは高橋の持つ大会記録(または日本最高記録)を破るくらいの走りをしないと代表は難しい、などの「高橋当確・内定」的な論調を見聞すると、わたしは何ともイヤな気持ちになります。何のために選考会をやるのか。オリンピックに出たい全ての選手にとって、選考は明朗公平なものであるべきです。わたしは最善は一発選考、次善はオリンピック毎に1から積み上げてゆくポイント制だと考えています。いっそ各選考会の上位者を集めてくじ引きやじゃんけんをさせた方がよほどすっきりしている。(苦笑)

【女子代表選考資料】
大会名と順位
 選手名 
優勝者と記録
年齢
 記録 
自己最高
備考(実績)
パリ世界選手権2位
03.08.31
野口みずき
ヌデレバ(ケニア)2:23:55
25
2:24:14
2:21:18
日本陸連の選考基準
により代表内定
東京2位
03.11.16
高橋尚子
アレム(エチオピア)2:24:47
31
2:27:21
2:19:46
シドニー五輪1位
日本記録保持者
大阪1位
04.01.25
坂本直子
同左
23
2:25:35
2:21:51
パリ世界選手権
4位
大阪2位
千葉真子
坂本参照
27
2:27:38
2:21:45
パリ世界選手権
3位
名古屋1位
04.03.14
土佐礼子
同左
27
2:23:57
2:22:46
2001エドモントン
世界選手権2位


  ※15日の発表を聞いて※

 代表選考は方法には異議がありますが、今回の結果は納得できるものがあります。それは代表選考会の順位と記録という、誰が見ても優劣がわかりやすい基準が尊重されて代表が選ばれたことです。

 マラソンファンが誰にメダルを期待するのも自由ですが、オリンピックに出たいのはトップランナー誰もが同じです。代表選考は周囲の思惑とは別に、ランナー当事者にとって公平明快なものでなければ、代表選考会の意義が疑われます。明確な基準のない過去の「実績」選考がものをいうのであれば、選考会は暗黙の内定者を送り出すための儀式に過ぎず、他のランナーの努力や成果を貶めるものになります。今回高橋選手が東京で出した結果が仮に他の選手であったら、さほどもめることもなかったでしょう。冷静に選考会の結果を見れば、東京の記録を出したランナーが選ばれるのは厳しい。

 国民栄誉賞まで受賞した高橋選手の人気と知名度のすごさは想像がつかないほどです。もちろん実績も飛び抜けている。高橋選手の実績と人気・影響力を重く見るならば陸連は前回のメダリストを無条件で内定すればよいのです。陸連が前回金メダリストを内定しなかったのは、やはり実績とは別にオリンピック前の「今」みんなに強さを見せて堂々と代表に選ばれてほしいということでしょう。「過去に実績を持つ人を優遇したがるのはわからないこともないですが、実績のある人は、それにふさわしい結果を出さなくてはいけないと思います。」という一文を電網上で読んだが、的を射た指摘です。今回はあいまいな過去の「実績」よりも選考会の順位・記録・内容に重きが置かれたことを評価します。実績の評価がいけないというのではなく、例えば「前回オリンピックのメダリストは無条件で内定」というような誰が見ても分かる基準があればいいということです。選考方法に誰が見ても分かる基準を設けない限り悲劇は続きます。

 何が基準にふさわしいかはまた別の議論ですが、選考会の順位・記録でも過去の国際大会のメダルでも投票でもいいので、誰が見ても当落が分かる物差しを決めずに、(おそらくは)「スポンサー契約」と「代表決定権という陸連の影響力維持」のため選手が翻弄されることは止めるべき。騒動の原因は陸連にあります。それでも事前予想は決して高くなかった諏訪選手を代表に選び高橋選手を外したことは、従来から見て小さくない陸連の決断です。これを期に北京の時はより選手にとって公平で、マラソンファンにとって明朗な選考基準が示されることを望みます。

 今回選ばれた代表はかくも過酷な競争をくぐり抜けてきました。結果に納得するしないに関わらず、代表には大きな声援を送りたい。そして落選した選手を思う余り、代表や関係者に心ない中傷をする人が出るようなことが無いことを願う。

 諏訪選手は地元の佐波郡東村出身であり特に注目したい(^_^)。

(2569.03.24)



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